2024年に所得階層が上がった人は、分析対象の**16.9%**です。公表されている比較期間で最も低い割合です。背景として、高齢化と若者の雇用環境が挙げられています。ただし、この数値が示すのは所得額ではなく、相対的な順位の変化です。
主な数値は、2026年10月29日に発表された国家データ庁の2024年所得移動統計に基づいています。
所得階層と所得分位の意味
この統計の所得階層は、個人の勤労・事業所得の順位によって分けた集団です。所得が低い順に五つの集団に分けています。各集団は全体の20%に当たります。
| 区分 | 所得順位の意味 |
|---|---|
| 第1分位 | 所得が最も低い下位20% |
| 第2分位 | 下位20%超から40%まで |
| 第3分位 | 下位40%超から60%まで |
| 第4分位 | 下位60%超から80%まで |
| 第5分位 | 所得が最も高い上位20% |
分位の上昇は、前年より高い集団に移ったことを意味します。給料が上がっても、ほかの人の所得も上がれば、分位は変わらない場合があります。したがって、分位の維持と所得の停滞は同じ意味ではありません。
分析の単位は世帯ではなく個人です。所得は、その年の1~12月の勤労・事業所得を合算します。住宅や金融資産の保有額を基準に分けた階層ではありません。
高齢層の割合の増加は、全体の所得階層間の移動率を低下させる要因になり得ます。
2024年の所得階層移動の結果
2024年には、分析対象の33.0%が前年とは異なる分位に移動しました。この割合には、上昇と下降の両方が含まれます。同じ分位にとどまった割合は**67.0%**です。
| 指標 | 2024年の割合 | 前年からの変化 |
|---|---|---|
| 上方移動 | 16.9% | 0.5%ポイント減少 |
| 下方移動 | 16.1% | 0.7%ポイント減少 |
| 移動全体 | 33.0% | 1.2%ポイント減少 |
| 同じ分位を維持 | 67.0% | 1.2%ポイント増加 |
維持率の前年からの変化は、全体の移動率の増減から計算した値です。全体の移動率の低下には、下方移動の減少も含まれます。したがって、移動率の低下をすべて暮らしの悪化と解釈することはできません。
所得額の増加と分位の上昇は、実際の結果でも異なります。国家データ庁の公式ブリーフィングでは、2024年に所得額が増加した割合を61.4%と説明しています。これは、分位が上昇した割合の16.9%とは異なる指標です。
| 比較基準 | 所得額の変化 | 所得分位の変化 |
|---|---|---|
| 比較対象 | 自分の前年の所得額 | ほかの人との相対的な位置 |
| 2024年の上昇割合 | 61.4% | 16.9% |
| 解釈 | 所得額が増加した人の割合 | より高い分位に移動した人の割合 |
所得額が増えたからといって、購買力も同じ幅で増えたとは限りません。生活水準を判断するには、物価の変化も併せて見る必要があります。この統計の分位移動率は、生活費の負担を直接測定するものではありません。
所得階層の移動が減った理由
移動が鈍化した背景として、高齢化と若者の雇用環境が挙げられています。国家データ庁は、公式ブリーフィングでこの二つの要因を説明しました。ただし、各要因が減少分のどれだけを占めるかは示していません。
高齢層の割合の増加
移動率の低い高齢層の割合が増えると、全体の平均も下がる場合があります。2024年は、年齢の高い集団ほど移動率が低くなっていました。以下の割合は、各年齢層の中で上方移動と下方移動を合計した値です。
| 年齢層 | 年齢範囲 | 2024年の所得移動率 |
|---|---|---|
| 若年層 | 15~39歳 | 39.3% |
| 中高年層 | 40~64歳 | 30% |
| 高齢層 | 65歳以上 | 25% |
全体の平均は、各集団の移動率と人口に占める割合の影響を受けます。集団別の移動率が同じでも、人口構成によって平均が変わる場合があります。これは、平均を解釈する際に区別する必要がある統計的な効果です。
若者の安定した仕事への就職
若年層の中でも移動率が下がった点は、別の問題です。2024年の若年層の移動率は40%を下回りました。若年層の上方移動率は22.4%です。
国家データ庁は、安定した高所得の仕事に就く難しさが背景にあると説明しています。そうした仕事に就けなければ、低い分位にとどまる可能性があります。ただし、この説明だけで個々の若者の所得が停滞する原因を特定することはできません。
高齢化だけでは、若年層内部の移動の鈍化を説明できません。就職の有無と、就職後の所得の変化を分けて見る必要があります。全体の平均と年齢層別の指標を併せて読む必要があるのは、このためです。
条件別の整理:下位・上位階層の維持率
2024年は、下位・上位の分位ともに、前年より維持率が高くなりました。両集団の維持率は、それぞれ前年より0.6%ポイント上昇しました。ただし、1年間の維持率と長期継続率は異なる指標です。
| 出発点の集団と観察期間 | 同じ分位を維持した割合 | 意味 |
|---|---|---|
| 2023年の第1分位から2024年まで | 70.7% | 翌年も下位20%を維持 |
| 2023年の第5分位から2024年まで | 90% | 翌年も上位20%を維持 |
| 2017年の第1分位から2024年まで継続 | 24.9% | 8年連続で第1分位を維持 |
| 2017年の第5分位から2024年まで継続 | 56.0% | 8年連続で第5分位を維持 |
長期継続率には、途中でほかの分位に移動したかどうかも反映されます。開始年と最終年の位置だけを比較した値ではありません。途中で別の分位に移ってから戻った場合と、継続して維持した場合を区別する必要があります。
また、第1分位と第5分位では、移動できる方向が異なります。第1分位には、それより下の分位がありません。第5分位には、それより上の分位がないため、中間の分位と単純に比較するのは困難です。