ボイスフィッシングは、もはや不自然な話し方で口座振込だけを要求する犯罪ではない。流出した個人情報、巧妙な機関のなりすまし、遠隔操作アプリ、偽の投資プラットフォーム、家族のSNS情報、AI合成音声を組み合わせ、被害者の判断を揺さぶる。
特に、ある程度の資産を築いている一方、新しいアプリやセキュリティ手順には不慣れな場合もある中高年層が、集中的に狙われる可能性がある。ただし、年齢やデジタル習熟度にかかわらず、誰でも緊急時にはだまされる可能性があるため、個人の注意力に頼るよりも、家族や金融機関を含む多重確認の手順を作ることが重要だ。
2025年の被害統計を読む際の注意点
運営者提供の資料が引用した警察庁の集計によると、2025年の韓国国内におけるボイスフィッシング被害額は1兆2,578億ウォンで、史上初めて1兆ウォンを超え、被害者の半数以上が50代以上だったとされている。
ただし、ボイスフィッシング、メッセンジャーフィッシング、投資情報チャット詐欺、ロマンス詐欺などは、発表機関や統計基準によって異なる犯罪類型として集計される場合がある。被害額や年齢別の割合を比較する際は、次の条件も併せて確認する必要がある。
- 発生年と届出・検挙年のどちらを基準にしたか
- 口座振込型のボイスフィッシングだけを含めたか
- 暗号資産投資詐欺や投資情報チャット詐欺を含めたか
- 被害者数、被害事件数、送金件数のうち、どの値を使用したか
- 暫定集計か確定統計か
したがって、特定の数値だけで危険性を誇張するのではなく、犯罪類型と集計範囲を併せて確認することが望ましい。
新手のボイスフィッシングの主な手口5つ
1. 検察・警察・金融監督院のなりすまし
犯人は被害者の氏名、勤務先、住所、取引先の金融会社など、すでに流出している情報を示して信用させる。その後、口座が犯罪に関与している、逮捕される可能性があるなどと脅し、通話を切らせない状態で送金や現金の受け渡しを要求する。
次のような要求があれば、まず機関のなりすましを疑う必要がある。
- 捜査上の秘密を理由に、家族や銀行員に話さないよう求める。
- 安全口座、保護口座、または国家管理口座へお金を移すよう求める。
- 資産検査や犯罪関与の有無を確認するために、お金を送るよう求める。
- 現金を引き出して特定の人物に渡すよう求める。
- 身分証明書や公文書のように見える画像をメッセンジャーで送る。
実際の捜査機関が、電話で資産を検査するとして、個人口座のお金を別の口座へ移すよう指示することはない。表示される電話番号や公文書の画像は偽装できるため、それ自体を本人確認の手段として使用してはならない。
2. 悪意のあるアプリまたは遠隔操作アプリのインストール誘導
犯人は、事件照会、セキュリティ強化、融資申請、還付、カード配送確認などを名目にリンクを送る。インストールされたアプリが過度なアクセシビリティ権限、画面共有、メッセージ閲覧、デバイス管理者権限を取得すると、通話や金融認証の過程が漏えいする可能性がある。
AnyDeskのような遠隔サポートプログラム自体は、正規の業務にも使用される。危険なのは、知らない人物が電話でインストールを指示し、接続コードや操作権限を要求する状況だ。
悪意のあるアプリが疑われる携帯電話では、検索した機関の番号へ直接電話するだけでは十分でない場合がある。検索広告や偽サイトが表示される可能性があり、悪意のあるアプリが通話画面を操作したり、別の番号へ接続したりする可能性もあるためだ。携帯電話の電源を切るかネットワークを遮断し、感染していない別の電話から公式の代表番号へ連絡しなければならない。
3. 子ども・家族になりすますメッセンジャーフィッシング
典型的な文言は、「携帯電話が壊れた」「今は通話できない」「急いで支払う必要がある」といった内容だ。犯人は送金だけでなく、身分証明書の写真、カード番号、口座の暗証番号、認証番号を要求することもある。
最近では、公開されているSNS投稿から学校、勤務先、旅行日程、家族間の呼び方を収集し、会話を自然に見せる。プロフィール写真や家族情報が正確であっても、実際の家族である証拠にはならない。
確認する際は、メッセンジャーでの会話を中断し、もともと保存していた番号へ直接電話する。通話できなければ、別の家族や勤務先など、事前に把握している連絡網を通じて確認する。
4. 投資情報チャットと偽の取引プラットフォーム
無料の銘柄推奨や有名専門家になりすました広告で接触し、その後グループチャットへ誘導する。チャット内のほかの参加者が利益の証拠を繰り返し提示するが、これらも犯罪組織が運営するアカウントである可能性がある。
偽のアプリやウェブサイトに表示された利益は、実際の資産ではない。少額の出金を一度だけ認めて信用させた後、投資額を増やさせる手口も使われる。被害者が出金を申請すると、税金、保証金、ランク引き上げ費用、資金洗浄確認費用を追加で要求する。
次の組み合わせは、極めて強い危険信号だ。
- 元本保証と異常な高収益を同時に約束する。
- 個人名義や、頻繁に変わる口座へ入金するよう求める。
- 出金するために、先に税金や手数料を送るよう求める。
- 金融会社の登録状況や実在するオフィスを確認しにくい。
- 有名人の写真や報道機関のロゴだけで信頼性を強調する。
預金者保護の対象となる預金や、法律上の保証制度がある商品は別途存在するため、「元本保証」という表現だけですべての商品を詐欺だと断定することはできない。しかし、知らない人物に勧められた高収益投資で元本保証をうたっている場合は、直ちに取引を中断すべきサインだ。
5. AI合成音声・映像による家族のなりすまし
公開されている音声や映像があれば、生成AIを利用して特定人物の話し方や顔をまねることができる。合成の品質は、元の資料、モデル、通話環境によって異なるため、「数秒で99%同じように複製できる」といった固定的な数値で説明するのは正確ではない。
重要なのは、声や映像だけで本人だと確定してはならないということだ。誘拐、事故、入院費のような緊急の事情を聞かされても、まず通話を切り、独立した連絡経路で確認しなければならない。ビデオ通話も合成されたものや事前に録画された映像である可能性があり、単独の確認手段としては十分ではない。
電話やメッセージを受けたときの30秒対処法
- 要求を実行しない。 送金、現金の引き出し、アプリのインストール、画面共有、個人情報の送信を止める。
- 説明や議論をせずに切る。 通話を続けるほど、恐怖と時間的な圧力にさらされる。
- 別の経路で確認する。 家族には以前から保存している番号で、機関には公式ウェブサイトや文書に記載された代表番号で連絡する。
- アプリをインストールした場合は別のデバイスを使う。 該当する携帯電話を機内モードにするか、電源を切る。
- お金を送った場合は直ちに通報する。 銀行のカスタマーセンターと警察112に支払停止を要請する。
検索結果に表示された広告の番号、相手から送られた番号、メッセージ内のリンクは、確認用に使用しないほうが安全だ。
家族で決めておく確認ルール
家族の合言葉は、AIによるなりすましを見分ける補助手段になり得る。ただし、合言葉がメッセンジャーの履歴やSNSに残ると流出する可能性があるため、それだけを信じてはならない。
推奨される家族の確認ルールは次のとおりだ。
- 送金依頼を受けたら、必ず以前から使用している番号へかけ直す。
- 連絡が取れない場合に確認する、2人目の家族や知人を決めておく。
- 合言葉はオンライン上に記録せず、定期的に変更する。
- 相手が答えを検索しにくい、最近の家族の出来事について質問する。
- 一定金額以上の送金は、家族2人が確認した後に実行する。
- SNSで電話番号、学校、勤務先、旅行日程、家族関係の公開範囲を狭める。
合言葉に答えたという理由だけで送金してはならない。以前から使用している連絡先へかけ直すという、独立した確認が重要だ。