円安は、日本が金利を引き上げても、米国との金利差が残れば続く可能性があります。市場の金利見通しや海外投資の動向も影響します。ウォンで円を買うときは、ドル・円相場とウォン・ドル相場の両方を見る必要があります。
政策金利の数値は、2026年9月の米国と日本の中央銀行の発表に基づきます。
円安はどの為替相場を基準にしていますか?
円安は、比較対象の通貨に対して円の価値が下がる現象です。ドル・円相場は、1ドルを買うのに必要な円の額を示します。この数値が大きくなると、ドルに対する円の価値は下がります。
ウォン・円相場は通常、100円を買うのに必要なウォンの額で表示します。この数値が下がると、ウォンで円をより安く買えます。二つの為替相場は基準となる通貨が異なるため、同じ方向に動くとは限りません。
| 表示方法 | 数値が上がるとき | 数値が下がるとき |
|---|---|---|
| 1ドル当たりの円、円/ドル | ドルに対する円安 | ドルに対する円高 |
| 100円当たりのウォン、ウォン/100円 | ウォンに対する円高 | ウォンに対する円安 |
2026年夏の長期的な安値に関する報道は、ドルに対する円についてのものです。APは8月3日の報道で、7月にドル・円相場が一時164円を超えたと伝えました。同じ報道では、これを約40年ぶりのドル高水準と説明しています。ウォン・円相場の歴史的な安値と読み替えてはいけません。APの2026年8月3日の為替相場に関する報道
円安で輸入品の価格が上がると、家計の負担が増える可能性があります。
金利を引き上げても円安が続く理由
為替相場には、日本の利上げ幅よりも相対的な投資条件が作用します。米国の金利がより高ければ、ドル建て資産の利息面での魅力は残ります。市場は将来の金利差もあらかじめ価格に織り込みます。
日本銀行は2026年9月18日、政策金利の引き上げを決めました。無担保コール翌日物金利の誘導目標は年1.25%程度です。新しい指針は9月24日から適用されます。日本銀行の金融市場調節方針の変更に関する発表
The Bank will encourage the uncollateralized overnight call rate to remain at around 1.25 percent.
日本銀行、Change in the Guideline for Money Market Operations、2026年9月18日
これは金融機関の間の超短期金利を誘導する目標です。個人が同じ金利で円を借りられるという意味ではありません。実際の貸出金利には、信用力や金融機関の条件が反映されます。
| 比較項目 | 2026年9月の決定に基づく数値 | 解釈 |
|---|---|---|
| 日本の政策金利 | 年1.25%程度 | 日本銀行の短期金利の誘導目標 |
| 米国の政策金利 | 年3.75~4.00% | フェデラルファンド金利の目標範囲 |
| 米国と日本の政策金利差 | 2.50~2.75ポイント | 米国の目標範囲から日本の目標を引いた値 |
米連邦準備制度理事会も9月16日、政策金利の引き上げを決めました。したがって、日本の利上げだけを見て、両国の金利差が大きく縮まったとは言えません。上記の差は政策金利を単純に比較したものです。米国債の投資利回りを意味するものではありません。米連邦準備制度理事会の2026年9月のFOMC声明
すでに予想されていた利上げは、発表前に為替相場に織り込まれることがあります。その後の利上げペースが予想より遅ければ、円買いの勢いが弱まる可能性があります。利上げ後も円が弱いという事実だけで、政策効果がないと断定することは困難です。
円キャリートレードはどのように機能しますか?
円キャリートレードは、金利の低い円で資金を調達する投資です。調達した資金で、より高い収益を期待できる他の通貨建て資産を買います。この過程での円売りは、円安圧力となる可能性があります。
ただし、金利差は確定した収益ではありません。円高になると、借りた円を返済する費用が増えます。保有資産の値下がりも損失要因です。BISは、2024年8月に借入金を使った投資の縮小が市場の変動を拡大させたと分析しました。BISのキャリートレードの巻き戻しに関する分析
- 調達金利: 実際の円建て融資に適用される金利です。
- 運用収益: 投資資産から得る利息と、価格変動による損益です。
- 為替損益: 資金を円に戻す際に生じる損益です。
- 取引費用: 両替費用や手数料などです。
為替ヘッジは、為替変動リスクを減らす取引です。しかし、為替ヘッジの費用にも両国の金利差が反映されます。したがって、為替リスクをなくしながら金利差をそのまま得られるとは考えにくいです。BISの為替ヘッジと金利差に関する説明
経常収支が黒字でも円安になる理由
経常収支の黒字が、すべて直ちに円買いにつながるわけではありません。経常収支には、海外投資から生じた利息や配当も含まれます。海外子会社が現地に留保した利益も一部含まれます。
日本銀行の国際収支に関するFAQは、再投資収益の扱いを説明しています。海外子会社の留保利益を親会社に帰属する所得として記録します。同時に、金融収支には再投資として記録する仕組みです。実際に日本へ送金したり、円に両替したりしなくても記録されます。日本銀行の国際収支統計に関するFAQ
したがって、経常黒字から海外投資額をそのまま差し引く計算は、不正確になる可能性があります。二つの統計に、同じ再投資取引が対応する形で記録されることがあるためです。比較するには、まず期間と集計範囲をそろえる必要があります。
| 確認する区分 | 混同しやすい内容 | 正しい解釈 |
|---|---|---|
| フローと残高 | 年間の海外投資額と年末の海外資産 | 一定期間の取引と特定時点の保有額を区別 |
| 総額と純額 | 海外投資の購入額と純投資額 | 売却・回収や反対方向の投資が反映されているかを確認 |
| 所得と両替 | 海外で得た利益と円買い | 現地での再投資と実際の両替を区別 |
| 統計期間 | 年間数値と半期数値 | 同じ期間同士で比較 |
NISAは、投資収益に非課税の優遇措置を設ける日本の口座制度です。口座の資金がどの資産に投資されるかは別の問題です。NISAの利用額全体を海外投資や円売りの額とみなすことはできません。日本の金融庁によるNISAの説明
為替介入で流れを変えるのが難しいのはなぜですか?
円買い介入は、円の需要を直接増やす措置です。しかし、両国の金利差や投資家の長期的な見通しをなくすことはできません。介入後も円売りの誘因が残る可能性があります。
2026年8月3日、APは日米双方が介入を確認したと報じました。当時、ドル・円相場は取引時間中に155.20円付近まで下がりました。ただし、特定の期間における為替変動のすべてを介入の効果として切り分けることは困難です。同じ時間帯にも経済指標や金利見通しが変わるためです。APの日米の為替介入に関する報道
日本の財務省は、別途、自国の介入額を発表します。2026年7月30日~8月26日の合計は15兆3,993億円です。これは当該集計期間全体の日本側の金額です。ある1日に実施された日米共同介入の総額と読んではいけません。財務省の2026年8月28日の発表
介入の効果を判断するときは、次を区別する必要があります。
- 短期的な効果: 急激な為替変動を和らげたかを確認します。
- 持続的な効果: その後、金利見通しや資金の流れが変わったかを確認します。
- 集計範囲: 推計額か公式発表額かを区別します。
- 参加主体: 日本側の金額と米国側の金額を分けて見ます。
財政拡大と国債金利上昇の関係
国債金利の上昇が、常に円高を意味するわけではありません。金利が上がった理由によって、通貨への影響は異なります。財政への不安を理由に、より高い利息が求められる場合もあります。
| 国債金利が上昇する背景 | 市場で読み取れるシグナル | 円への影響として考えられること |
|---|---|---|
| 成長見通しの改善 | 投資収益と利上げへの期待の高まり | 円の需要を支える可能性 |
| 物価上昇への懸念 | お金の購買力低下への懸念 | 中央銀行の対応によって変化 |
| 国債供給の増加 | より多くの債券を消化する必要 | 需要と政策対応によって変化 |
| 財政への信認の低下 | リスクを引き受けるための追加的な見返りを要求 | 円安を伴う可能性 |
高市早苗政権は、食料品の消費税引き下げを進めました。2026年9月17日の会見でも関連法案に言及しています。同じ会見では、財源全体の確保を予算改革と併せて検討すると説明しています。政策を進めるからといって、直ちに全額を国債で調達すると断定する根拠は不足しています。日本の首相官邸による2026年9月17日の会見
政府が掲げる投資誘導の目標も、実際の政府支出と区別する必要があります。民間投資が含まれていれば、全額が財政負担になるわけではありません。確定した予算と国債発行計画を確認して初めて、実際の調達規模が分かります。
既存の国の債務に金利の上昇幅を掛ける計算にも限界があります。固定金利の国債の利息は、市場金利が上がってもすぐには変わりません。負担は、新規発行と満期を迎えた債務の借り換えを通じて反映されます。借り換えとは、満期を迎えた債務を新しい債務に置き換えることです。