イングランドの一般的な民間賃貸借は、2026年5月1日から周期型契約に変わった。賃料の引き上げは原則として年1回以下である。少なくとも2か月前に法定の通知が必要だ。既存の契約には、通知の方法と時期による例外がある。
数値と施行時期は、GOV.UKの案内と2026年10月9日の下院図書館の解説に基づく。
イングランドの賃貸借改革の適用対象
この記事で扱う契約の移行と賃料引き上げのルールは、イングランドの民間のassured tenancyに適用される。Renters’ Rights Act 2025は、この制度を改めた法律である。スコットランド・ウェールズ・北アイルランドの賃貸借にそのまま適用してはならない。
Assured tenancyは、法律上の保護を受ける居住用賃貸借の一種である。一般的な民間賃貸住宅の相当数がこれに該当する。賃貸人との同居の有無や住宅の種類によって、適用される制度が異なる。
| 居住・契約の種類 | 適用を判断する基準 |
|---|---|
| 一般的な民間のassured tenancy | 新たな周期型契約と賃料引き上げのルールが適用される |
| 既存のassured shorthold tenancy | 大部分は自動移行。既存の退去手続きについては経過規定を確認 |
| 地方自治体・住宅協会の社会住宅 | 民間賃貸借とは別のルールを確認 |
| 学生寮 | 一般的な民間住宅とは別のルールを確認 |
| 大家と同居するlodger | 同居型の賃借に該当する別のルールを確認 |
| 学生が借りた一般的な民間住宅 | 学生であるという理由だけで改革の対象から除外されるわけではない |
下院図書館は、社会住宅のassured tenancyの改革時期を2027年10月と案内している。学生向けの一般的な民間住宅には、別の退去事由が適用される場合がある。そのため、学生寮と学生が共同で借りた住宅は区別する必要がある。
市場家賃を上回る値上げは、適用日前に審判所へ異議を申し立てることができる。
既存契約の終了日と書き直しの義務
既存のassured shorthold tenancyの大部分は自動的に移行した。移行後の契約類型の名称はassured periodic tenancyである。週単位・月単位の周期で継続し、終了日が定められていない契約を指す。
既存の書面契約を書き直す必要はない。ただし、新法と矛盾する契約条項はそのまま適用されない。契約書に記載された終了日も、移行後は効力を失う。
賃貸借契約に終了日が定められていた場合、その終了日は適用されなくなる。
出典:The Renters’ Rights Act Information Sheet 2026
この文言は、従来の終了日が適用されなくなるという意味である。契約自体がなくなったり、賃借権が途切れたりするという意味ではない。契約は、適法な終了通知や合意などによって終了するまで継続する。
賃貸人は、既存の書面契約の賃借人に政府の案内文書を渡す義務があった。交付期限は2026年5月31日だった。書面による記録が一切なかった契約については、主要な条件を書面で提供する義務があった。新規契約についても、主要な条件を書面で提供する必要がある。
2026年5月1日より前に退去通知を受けた契約には、経過規定がある。一部の案件は従来の手続きに従って進められる場合がある。こうした契約が自動移行するかどうかは、通知と訴訟の進行状況に応じて判断する。
賃料引き上げの回数と通知の基準
新制度で賃料を引き上げるには、Section 13の手続きを踏む必要がある。これはHousing Act 1988に定められた法定の賃料変更手続きである。所定の様式はForm 4Aである。
| 確認項目 | 新制度の原則 |
|---|---|
| 引き上げ回数 | 年1回以下 |
| 新規契約の初回の引き上げ | 契約開始後の最初の1年間は不可 |
| 事前通知 | 最低2か月 |
| 通知の様式 | Form 4A |
| 引き上げの適用日 | 通知期間を満たす賃貸借周期の開始日 |
| 契約書の自動引き上げ条項 | 新たな引き上げの根拠には使用不可 |
| 引き上げ額の判断 | 条件が似た住宅で得られる市場賃料 |
通知は手渡し、または郵送で届けることができる。契約で認められていれば、メールも使用できる。単に引き上げ額を知らせる連絡だけでは、法定の要件を満たさない。
この制度には、一律の引き上げ率の上限はない。年1回という制限は、引き上げの回数に関するルールである。引き上げ後の金額が妥当かどうかは、市場賃料を基準に判断する。
市場賃料とは、その住宅を公開市場で再び貸し出す際に得られると見込まれる金額である。立地・広さ・状態が似た住宅が比較対象となる。賃借人の収入や負担できる金額だけで決まるものではない。
施行前の賃料引き上げ通知の条件別整理
施行前に受け取った通知は、様式と実際の引き上げ日を併せて確認する必要がある。既存の通知がすべて取り消されたわけではない。契約書の引き上げ条項と法定の通知も、それぞれ異なる扱いとなる。
| 状況 | 取り扱いの原則 |
|---|---|
| 2026年5月1日より前に適法なForm 4の通知を受けた | 従来の通知期間と引き上げ内容が維持される場合がある |
| 上記のForm 4の引き上げ日が施行後である | 施行後であるという理由だけでは無効にならない |
| 契約書の引き上げ条項に基づいて合意したが、施行後に適用予定である | その条項に基づく予定の引き上げは適用されない |
| 施行前にForm 4または引き上げ条項によってすでに引き上げられた | 次の引き上げまでの間隔を計算する際に、従来の引き上げ日を反映する |
| 施行後、既存契約の賃料を新たに引き上げようとする | 原則としてForm 4Aと新たな通知要件が適用される |
自動移行日は、過去の引き上げ履歴が消える日ではない。次に引き上げが可能となる時期は、前回の引き上げ方法と効力発生日によって決まる。施行前に単なる合意によって引き上げられた賃料は、別途検討が必要である。
市場賃料を上回る引き上げへの異議申し立て
引き上げ額が市場水準を超えると判断した場合は、審判所に異議を申し立てることができる。担当機関はFirst-tier TribunalのProperty Chamberである。申し立ては、通知書に記載された新賃料の適用日前にする必要がある。
- 通知書の様式と受領日を確認する。
- 引き上げの適用日と過去の引き上げ履歴を照合する。
- 契約書と引き上げ通知の写しを用意する。
- 住宅の状態と、比較可能な賃料の資料を整理する。
- 期限前にオンラインまたはMR1様式で申し立てる。
証拠の収集が終わっていなくても、申し立て期限は守る必要がある。引き上げ通知の法的な有効性も併せて争うことができる。有効性だけを争う場合は、紙のMR1様式を使用する。
裁判所・審判所の行政機関HMCTSの2026年8月10日の案内によると、手数料は£47である。2026年5月1日より前の日付の引き上げ通知には、免除規定がある。低所得などの要件を満たせば、手数料の支援を受けられる。
| 争点 | 役立つ資料 |
|---|---|
| 通知の手続き | 引き上げ通知書、交付の記録、既存の契約書 |
| 住宅の状態 | 各部屋の写真、修理が必要な箇所、設備の詳細 |
| 市場賃料 | 類似する住宅の実際の賃貸借契約と賃料の資料 |
| 比較条件 | 立地、面積、家具・設備が含まれるかどうか |
実際に締結された賃貸借契約は、広告価格よりも有力な比較資料となる。賃貸人と引き上げ額を抑える協議をすることもできる。ただし、協議中であるという理由で審判所への申し立て期限が延長されることはない。
審判所の決定後に適用される賃料
新ルールでは、審判所が決定する金額は賃貸人の提案額を超えることができない。決定が提案された引き上げ日より遅くなった場合は、新たな支払日を定める。通常は、決定後の次の支払日から新たな金額が適用される。
2026年5月1日より前の通知には、従来の決定ルールが適用される場合がある。その場合、提案額より高い金額が決定されることもある。通知書に記載された当初の引き上げ日から、その金額が適用される可能性もある。
賃借人による契約終了通知と既存契約の例外
賃借人が契約を終了する際の基本的な通知期間は2か月である。通知は、手紙・メール・テキストメッセージなどの書面でする必要がある。終了日は、賃料の支払日またはその前日に合わせる。
通知期間中は、原則として賃料を引き続き支払う。賃貸人と書面で、より短い期間に合意することができる。実際の引っ越し日だけで賃料の支払義務が終わるわけではない。
2026年5月1日より前に始まった契約では、従来の取り決めが残る場合がある。判断基準は、移行前の契約の形態である。既存の契約であるという理由だけで、短い通知期間がすべて認められるわけではない。
| 移行前の契約状況 | 終了通知期間の判断 |
|---|---|
| 当初から周期型契約である | 既存契約の通知期間を維持できる場合がある |
| 固定期間の終了日が2026年5月1日以降である | 既存契約の通知期間を維持できる場合がある |
| 固定期間が施行前に終了し、その後の継続条件がある | 従来の通知期間が概ね維持される |
| 固定期間が施行前に終了し、その後の継続条件がない | 新たな周期型契約の終了手続きが適用される |
| 施行前に適法な終了通知をすでに送付している | 従来の通知に記載された終了日が維持される |
政府の案内は、従来の取り決めが1か月の場合に、それを適用できるケースを説明している。賃貸人は、2か月を超える終了通知期間を要求できない。別途メールやテキストメッセージで合意した条件も、確認の対象となる。